住まいリング させぼ

人が人を想うとき。長崎・軍艦島と映画「軍艦少年」

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皆さん、こんにちは。12月になり一気に年末モードですね。
街のクリスマスイルミネーションに心躍る人もいれば、孤独感を感じてしまうという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
都会の片隅で一人センチメンタルな気持ちになっているそこのあなたへ本日は、この冬おすすめの映画と孤独との付き合い方についてご紹介します。

12月10 日いよいよ封切り、注目の邦画と言えばズバリ「軍艦少年」です。
原作は2012年、ヤングマガジン(講談社)にて連載された漫画作品。

ストーリーは長崎の端島(通称:軍艦島)が見える街に暮らす主人公・坂本海星と、ラーメン屋を営む父の玄海の絆の物語。最愛の母を亡くし喧嘩ばかりして過ごす息子の海星と、妻を亡くして酒浸りの父の玄海はお互いに素直になれず、関係がうまくいきませんでした。そんなある日、海星が大事件に巻き込まれてしま
い・・・。
監督はYuki Saito 氏。オール長崎ロケを実施、普段はなかなか立ち入ることができない、あの日本最大の廃墟島、「軍艦島」でのシーンが見所です。
主人公、海星役を劇団EXILEの佐藤寛太さん、父の玄海役を加藤雅也さん、病気の母親役は大塚寧々さんが演じられています。

「喪失」と「再生」の家族の物語

原作アニメを描かれた柳内先生が「軍艦少年」を描かれたのは、プライベートで大切な人を亡くされたことがきっかけだったそうです。
作品のテーマは「大切な人の死をどのように乗り越えるか」。
人は〝喪失感〟とどのように付き合い、前を向いて生きるのか・・・。

最愛の妻を亡くした父は自暴自棄になり、仕事をする気力も失い、酒に溺れる毎日。
そんな父を見てイライラし、暴言を吐いて喧嘩を繰り返す息子・・・。
作中には母親を亡くした息子と妻を亡くした父の様々な心情が交差するシーンが登場します。
変わりたくない自分と変わりたいと思っている心の葛藤。

それらに重ね合わせて廃墟島の哀愁漂う景色が映し出されます。(廃墟とは過去、現在、未来をつなぐもの___軍艦島については別記事で紹介していますので詳しくはこちらをご覧くださいね)

関連記事:諸行無常の響きあり。世界遺産の廃墟「軍艦島」に思いを馳せる

軍艦島が見える街に暮らす1つの家族の再生の物語。
残酷にも変化していくもの、受け入れて認めて行かざるをえないもの、それでも変わらずある大切なものは何なのか?登場人物の気持ちの変化をぜひ想像してみて欲しいと思います。

「喪失感」を乗り越える方法とは?

あなたはこれまでの人生で「大切なもの」を失ってしまった経験はあるでしょうか?
失恋、離婚、家族との死別、ペットとの死別、流産をしてしまった、両親との死別、地震や天災などで大切なものを失った経験がある方もいらっしゃるかもしれません。

筆者である私は、過去に父親の死と離婚などを経験しました。
その直後は正直ぽっかりと心が穴のようになり、しばらく空洞のままだったこともありました。好きな人との間に子を授からなかったということも自分にとってはとても大きな喪失感となり、当時はなかなか自分を認められず、好きになれず、だからこそ相手や周りを受け入れたり感謝したり・・そんなことができずに塞ぎ込んだ時期もありました。

そういう時は、何を言われても反発したくなる感情がわきおこります。
正論でアドバイスされるとまさに図星だったりするので余計にカチンときたり。
なかなか素直に受け入れられないのです。
なぜそんなに頑固なの?もっと気楽にやればいいのに。馬鹿になればいいのに。
そう言われても、そういう時期は・・・なかなか肩の力が抜けないのです。
幸せそうな人を見ても心から喜べない自分、「いいね」できない自分、性格悪い人みたい・・・。
そんな自分は嫌だ、と自分はわかっているから余計に落ち込むのです。

変わるためには何かを〝捨てる〟覚悟がいる。

「引っ越したら何かが変わる」
「気分転換に海外にでも旅してみたら?」

辛い人に向かって軽々しくそういうことを言う人もいます。でも実は、人と言うのは、そんな簡単には「変われない」「変わろうとしない」ものです。
そもそも、人は変わりたくない生き物だからです。

見知らぬ土地に引っ越しをしたり、新しい職場に突然変わったりすると余計に過去を思い出して、逆に喪失感でいっぱいになるかもしれません。孤独を感じたり辛さも増すこともあるのかもしれません。
そんな時は、まずは「感情を外に出す」ことから始めるといいように思います。

ファーストステップは、嫌な部分も丸ごと自分の気持ちを認めていくことです。
そして、辛い出来事によってあなた自身がダメダメな人間になったとか、価値がないなどと、「あなた自身が否定されるものでは決してない」と気づくこと。それが大切です。
過去にどんなことがあったとしても、傷ついて傷ついてボロボロになっていたとしても、現在のあなたは過去からすればもう既に「未来のあなた」なのです。

映画の主人公たちも、どうしようもなく荒んだ心をどう扱って良いかわからず戸惑い続けますが、喧嘩してはぶつかって、喧嘩してはぶつかって、全部出し切って・・・
「こんなに辛いよ」「悲しいよ」「しんどいよ」としっかりと外に出すことで弱い自分を認めていきます。
息子の前でボロボロになったカッコ悪い姿をさらけだす父親・・・。
そんな姿を普通は息子に見せたくないはずです。
大人だからとか子供だからとか関係ありません。
誰しも、人はそんな強くはないのです。弱い部分も含めて、それが「人間らしさ」なのです。
息子と父がお互いの「弱さ」をちゃんと認めあって分かり合えた瞬間、氷のように硬くなっていた心の扉がようやく開き始めるのです。

人、環境、新しい出会いが、新たな気づきを与えてくれる

私たちに一歩踏み出す勇気をくれるもの、それは「異質との出会い」です。
人、街、食べ物、自然・・・。
日常のささやかな出来事もあなたに気づきを与えてくれる存在かもしれません。

「人生リセットして変わりたい!」
そう願うだけではなかなか変われず、自ら新しいことにチャレンジするのは勇気も要ります。性格を変えるのは簡単ではないし、一歩踏み出す勇気をもつのは時間がかかるものなのかしれません。
しかし、「小さな出会い」の積み重ねは、きっとあなたがあなた自身と向き合う心の旅となるでしょう。
その時すぐに気づけなくても、すぐに「ありがとう」と言える心の状態ではないかもしれないけれど、「ちょっといいな」「素敵だな」、「この感じ好きだな」、「美味しいな」など、いつもと違う感情を持てたことが一歩前進なのです。
新鮮な感情が自分にもあるのだと気づけていくことで、好奇心の扉は少しづつ開き、ワクワクする自分を取り戻していくはずです。その土地の旬の食材、産物を食べてみるのもいいかもしれませんね。

私も人生で辛いことがあった後、冷静に自分をみつめ直して「引っ越し」や「移住」を考えました。東京生活をリセットしよう、と決めていました。
「海のある街で暮らしたい」と、たくさんの街の不動産を調べたものです。
実際、プチ移住を試みて沖縄でワーケーションをしてみたりもしました。
その土地の食べ物やライフスタイル、ご近所さん、たくさんの「好き」にも出会いました。
そして・・・その延長線上に長崎「佐世保」の街が選択肢に入ってきたのです。

ご近所で出会った「人」とのおしゃべり、ステーキやお刺身、「食事」にパワーをもらい、海山の「自然」に癒され、少しづつ、笑うことができるようになっていきました。

「あ〜、私、こんなに笑えるんだな」

と気づいた時、ようやく周りの声を受け入れられるようになりました。
そして、〝人を思いやる〟と言うことがどういうことなのか、徐々にわかりはじめてきたのです。誰かのやさしさに触れるたび、季節や大自然のめぐみに出会うたび、自分の中の固くなった結び目が解れていく感覚があり、何かが変わり出す実感があり、感謝の気持ちも芽生えるようになっていきました。
その繰り返しで孤独感は和らぎ、心の充実度が増しました。

〝人が人を思いやる〟と言うこと。

「思いやりが大切」
「思いやりがある人がタイプです」
「我が社は思いやりの精神で」

簡単に言うけれど・・・
人はまず自分自身のことをちゃんと思いやれないとなかなか人を思うことなどできません。

「大震災に遭遇し、自身の無力さに打ちのめされた・・・。」
「パートナーを病気で亡くして以来、人を好きになるなどできない・・・。」

辛い体験をした本人にしかわからない苦しみはきっとあるでしょう。
それでも私たちは、なんとかかんとか前を向き困難を乗り越えて生きていくものなのだろうと思います。
だからこそ、例えそれが他人のことであっても、「余計なお節介」で終わらせず、お節介でも関わりあい、「愛」を持って接していければ素敵ですよね。
〝誰かが誰かを思う〟ことで、人は何かに気づけたり、目を覚ましたり、心を動かされたりすることもあるのかもしれません。

今の時代は、そんな人と人とのリアルな関わりあいと言うのが少ないように思います。
sns が言いたいことを言う場、ストレスの吐け口になったり、見知らぬ誰かとの繋がりになっているのかもしれません。
しかしここ佐世保の街では、昔ながらの商店街、ジャズライブハウス、気軽に声をかけてくれる人懐っこい人たちとのリアルな交流があります。

「今日はお天気ね!」などと言う、たわいもない会話。
一見何でもないように思えますが、そんな声がけが誰かを救い、心のペースメーカーとなるかもしれません。
この街には歴史的遺跡や鎮守府の側面もあります。
悠久の時を経てきた古い建物にノスタルジーを感じる瞬間・・・
「今もちゃんとあるのだ」、「私は私のままでいいんだ」と、思えるかもしれません。

人生100年時代。
誰しも、辛いことの1つや2つは経験するでしょう。自分が大嫌いになることだってあるでしょう。
そしてそれは定期的に繰り返し訪れるのかもしれません。
独身の人は独身の、子育てに終われる母親は母親なりの、仕事を失ったり家族を失ったりした人、もう若くないと言う哀愁を感じて寂しくなる高齢者、誰しもがきっと何らしらの「喪失感」を味わうのではないでしょうか。

我々はそんな喪失感といかに付き合い、生きていくのか。
人と人がつなぐ、 思いやり と 絆 とは何なのか。

この映画をご覧になって何かを感じてみてはいかがでしょうか?
そして家族や友人への思いやりについても考えてみてください。
周りから置いてけぼりになりそうで怖かったり、孤独感を感じたり。そんな人がもしいたら、あなたの「大切なもの」を思い出してみませんか?

佐世保にいまは興味がない方も、何か少しでも感じて頂けたり興味を持ってもらえると嬉しいです。
このメディアの記事を読むことで「あなたの大切なもの」にぜひ向き合うきっかけにもしていただきたいです。他インタビューなども読んでいただければ幸いです。

<映画クレジット情報>
東京・ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国公開

■ 映画「軍艦少年」 2021年12月10日(金)全国公開
出演:佐藤寛太、加藤雅也、山口まゆ、濱田龍臣、柾木玲弥、一ノ瀬ワタル、花沢将人、高橋里恩、武田一馬、赤井英和、清水美沙、大塚寧々
監督:Yuki Saito
脚本:眞武泰徳
劇中画:柳内大樹
原作:柳内大樹『軍艦少年』(講談社「ヤンマガKC」刊)
主題歌:10―FEET 卓真「軍艦少年」(UNIVERSAL MUSIC)
企画・プロデュース:眞武泰徳
アクション監督:鈴村正樹
音楽:戸田信子
制作プロダクション:エノン
制作協力:オフィスアッシュ
製作:『軍艦少年』製作委員会
配給:ハピネットファントム・スタジオ
高橋里恩の高ははしご高が正式表記。
(c)2021『軍艦少年』製作委員会

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