毎日の子育てやパートナーとの関係が順調だと感じていますか?
出産後に起こりうる「夫婦関係がぎすぎすしてきてしまった」「子育てに関して不満がたまっている」など、夫婦仲の低迷「産後クライシス」を改善するヒントや、特徴や原因、対処法など産後クライシスについて理解を深めておくことで、相手の気持ちや状況に寄り添い夫婦のすれ違いを解消することができるでしょう。
目次
産後クライシスとは
『出産後数年の間に夫婦の愛情が急激に冷え込む現象』のことで、ここでは夫婦のすれ違いなどによるトラブルをさします。
実際に夫婦にとられたアンケートを見てみると、妊娠期には男女ともに7割が相手のことを「愛している」と回答するのに対し、出産後は徐々に低迷し、男性は5割・女性は3割という結果が得られているそうです。
男女ともに子どもに愛着がいくという理由からパートナーへの愛情曲線は出産後一度下がります。
その後、女性は回復グループと低迷グループに分かれ、夫婦で子育てをしたという実感が得られたら夫への愛情は回復。逆に、ワンオペ育児だと感じるほど夫への愛情は低迷したままになるのだそうです。
また、男女の間にパートナーとの関係や育児への価値観に差があるため、産後クライシスを乗り越えるには、お互いの気持ちを理解し合うことが重要です。
産後クライシスの特徴
産後クライシスに陥っている夫婦の特徴として、
配偶者に対して愛情を感じなくなった
感情のコントロールが上手くとれない
攻撃的な言動が増える
些細なことで配偶者にイライラする
配偶者からの愛情を感じられず冷たくされていると感じる
家庭内に不満をもっている
夫が家事や育児に非協力的だと感じる
妻が子どもばかりに目をむけ、自分は置き去りにされていると感じる
など、特に乳幼児期は母親の存在が必要不可欠なため、妻側としては子育てで手一杯なのに夫が子育てを理解してくれない、仕事やプライベートを優先させているなど、夫への不満を募らせているというケースが多いようです。
自分たちでは気づきにくい心情的な変化(お互いが感情や不満を我慢することによる精神的疲弊)という特徴を把握しておき、変化に気づき解決に向けた話し合いが億劫にならないように、産後クライシスに陥っているかもしれないと感じたら、まずは冷静に夫婦間の現状を把握し、夫婦関係の回復を図れるように対処するようにしましょう。
産後クライシスの見極め方
配偶者に対して些細なことでイライラしてしまう
スキンシップに嫌悪感を抱く
配偶者に対して冷たい態度をとってしまう
喧嘩腰の態度が増えた
夫婦間のコミュニケーションが減った
などの状況が増えていれば、産後クライシスに陥っている可能性があります。
些細な事にも感じますが、これらの行動を放置することで、夫婦喧嘩が絶えない状況や、家庭での居場所を感じられず仕事やプライベートを優先してしまうなどの状態につながってしまいます。
さらに悪化の一途をたどると、夫婦で共有する時間が減り、お互いが抱えている不安は増し、夫婦関係の修復が不可能になってしまうため、対処するには自分たちが産後クライシスに陥っていることを認識しなければなりません。
産後クライシスはいつまで続くの?
産後クライシスが続く期間は一般的に産後数年といわれています。
個人差はありますが、産後の体調回復や子育て状況・環境の安定、夫側の理解や協力などが落ち着いてくると産後クライシスも終わりを迎えるようです。
ただ、夫婦間での理解や協力ができないと、産後クライシスが長期化する場合や離婚に至ってしまうケースもあることを踏まえると、産後クライシスに陥っていることをマイナス面にとらえるだけでなく、状況を把握して夫婦仲の改善に努力する必要があります。
産後クライシスになる原因
では、なぜ産後クライシスという状況が生まれてしまうのでしょうか?
産後クライシスの原因は人それぞれですが、
出産によるホルモンバランスの乱れ
夫婦間のコミュニケーション不足
子どもが中心となる生活環境の変化
夫の非協力的な態度
育児についての価値観や考え方の違い
などがあげられます。
ここからは、それぞれの原因についてもう少し深く掘り下げていきます。
子育ての不安
特に初めての子育てにはたくさんの不安がつきまといます。
子どもの健康や将来を案じ、まじめな女性ほど「良いママにならなくてはいけない」というプレッシャーとも毎日戦うことになるのです。
また、出産は子育てだけではなく、女性の人生を一変させるようなライフイベントです。仕事を辞めたことで社会から取り残されたような気分になったり、自分の必要性を感じられなくなったり、未婚の友達との会話や感覚が合わなくなるなど、さまざまな精神的不安が襲ってきます。
「出産=幸せ」という理想と、毎日の苦労や問題による現実のギャップが原因と考えられます。
出産によるホルモンバランスの変化
妊娠中には赤ちゃんをお腹で育てるために必要不可欠な「エストロゲン」と「プロゲステロン」という女性ホルモンが急激に増加します。
ところが、この女性ホルモンは出産をすると急激に減少し、その変化に身体が追いつけないことによりさまざまな不調を引き起こしてしまうのです。
ほかにも、陣痛による筋肉痛、会陰切開による痛み、子宮が収縮することによって起こる後陣痛など、産後の身体には大きな負担がつきまといます。
このような産後の痛みやホルモンバランスによる感情の浮き沈みは理性でコントロールするのが難しく、攻撃的になってしまうことが原因と考えられます。
男性からしたら想像がつきにくいかもしれませんが、だからこそ妻の体調をよく把握し寄り添ってあげることが必要です。
子ども優先の生活になる
出産を終えると全てが一変し、家庭は子どもが最優先の生活になります。
女性は大きな負担のかかった身体でありながら、24時間体制で子どもの世話をしなければなりません。自分の時間がなくなって行動や睡眠を制限されるなど、女性にとっては特に生活変化を顕著に感じてしまうのです。
生活の変化を受け入れなければならない女性とは反対に、男性は仕事や飲み会に行ったり、休日は友達と出かけたりと、女性に比べて自由度が高い環境にあります。
男性が十分に育児に協力していても、これまでと変わらない生活を続けているように見える状況に女性はストレスを感じてしまうのです。
子育ての負担に対する不平等さ
男女平等が叫ばれているこの時代でも、やはり子育てのおける男女の負担は平等だとはいえません。
平成30年の調査によると、女性の育児休業取得率は82%を超えているにも関わらず、男性はいまだ60%にとどまっています。
また、6歳未満の子どもを持つ夫婦の家事・育児関連の稼働時間(週全体の1日あたり)は、妻が7時間30分、夫は1時間20分となっており、この数字は先進国のなかでも最低の水準だそうです。
ただ、いくら協力しようと思っても、出産や産後の身体の負担は女性だけのものであり、男性には理解が難しいことも事実です。
夫が子育てに非協力的
子育てはまだまだ女性が主体となっている家庭が多く、妊娠から出産にかけて受入体制が整っている女性に比べてその変化に男性がついていけないケースは珍しくありません。
特に、乳児期の赤ちゃんには3時間おきの授乳やおむつ替えなど、24時間体制でお世話する妻にとって夫の非協力的な態度は大きなストレスになります。
また、男性が協力している場合でも、不慣れな手つきで時間がかかりホルモンバランスが不安的な妻に怒られることでどうせうまくできないから妻にやってもらおうと非協力的なサイクルをつくってしまう場合もあります。
コミュニケーション不足
コミュニケーション不足は夫婦関係に溝をつくってしまうだけでなく、産後クライシスを引き起こす大きな原因にもなります。
妻は慣れない育児で疲れていて、夫も仕事から帰ってくると話を聞き逃してしまったり、対話する時間を設ける余裕がなくなりがちです。
そんな状況が続くと女性はまじめに聞いてもらえないから話さない、男性は育児を頑張る女性をみてないがしろにされていると感じてしまいます。
【妻向け】産後クライシスの対処法
自分のためはもちろん、子どもや夫婦関係のためにも1人で悩みを抱えこまないようにしましょう。
少しの時間でも個人の時間を確保する
育児で追い込まれすぎると子どもへの感情が悪い方に向いてしまったり、最悪の場合DVなどに走ってしまう場合もあります。
自分だけの時間を満喫すれば、気持ちに整理がついて産後クライシスの脱却につながります。
頼ることでストレスを溜めない
自分のなかや夫婦間だけで思い悩みがちな育児ですが、周りの人やサービスを頼ることも大切です。
家族や友人、地域の子育てサービス、ベビーシッター、家事代行サービスなど利用し、少しの時間だけでも子育てや家事から離れることでストレスと上手に付き合いましょう。
客観的に自分を見る
自分を客観的にとらえるためには、1人の時間を持ったり紙に書きだしてみるのがおすすめです。
自分の状況を理解して夫に伝えることで夫からの理解も得やすくなるでしょう。
家事育児について夫にはっきり伝える
男性には言われなければかわらないことがたくさんあります。
非協力的になりたいわけでなく何をしたら妻の力になれるのかわからないからやれないという男性も少なくないのです。
不満を抱えているのであれば自分だけで解決したり抱え込むのではなく、夫にはっきりと言葉で伝えるようにしましょう。
伝える際も相手を責めるような言い方にならないように気をつけ、優しくリードしてあげてください。
第三者に相談する
信頼できる第三者に相談することで、大きく感じる問題でも第三者から意見をもらうことでスムーズに解決する場合もあります。
家族や友人など距離が近い人、子育て経験のある人を頼ると良き理解者になってくれるかもしれません。
身近に相談できる人がいない場合は、地域の子育てサービスなどを利用しましょう。
相談窓口や支援センターの詳細は各自治体のホームページなどを確認してみてください。
【夫向け】産後クライシスの対処法
子育てに対する男性の向き合い方は女性の気持ちに大きな変化をもたらします。
女性がストレスを溜めすぎないためにも気がけておきましょう。
妻の変化を受け入れ理解を示す
男性は身体の変化がなくイメージが湧きにくいことから、父親としての時間をもつのに時間がかかるといわれています。
妻が子どもを優先するのは当然のことです。
イライラあたってきたり性行為を拒否されたとしても“今はそういう時期なのだ”という寛容な気持ちを持つことを心がけましょう。
また、妊娠期間中から産後のイメージを夫婦間で共有しておくことも大切です。
自分にできることを探す
男性の育児休暇制度が導入される会社も増えてはきましたが、実際に休暇を取得する人は少ない現状にあります。
仕事をしていると育児に関わる時間が少ないのは仕方がないことですが、家にいる間は積極的に自分にできることを探すようにしましょう。
コミュニケーションを大切にする
特に産後の女性は1日中家で子どもと向き合っている場合が多く、孤独感やストレスを抱きがちです。
誰とも話すことなく1日が過ぎてしまう場合もあるので、夫婦でコミュニケーション取る際はきちんと話を聞くことを心がけましょう。
また、産後鬱などの陥る場合もあるため、妻の様子に注意を払ったり何か手伝えることはないか声をかけることも大切です。
心身共にストレスと抱える妻にとって、夫の寄り添いは何より心強いものです。
まとめ
産後クライシスは、子どもを持つすべての夫婦に陥る可能性がある問題です。
出産は戸惑いや不安が多いからこそ投げやりになるのではなく、夫婦がお互いに協力体制になって産後クライシスを乗り越えていきましょう。