住まいリング させぼ

あさイチマルシェ(佐世保)/午前6時に完売?お店もお客も予想外の大賑わいあさイチマルシェ

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驚いた。
車がなかなか停められない。
停めるスペースが見つからない程、沢山の車が停まっている。
『うそやろ?』が最初の本音だった。

時刻は午前6時。午前4時から開催とは聞いていたが、そんなに早くから取材にいってもあまり人はいないだろうから、この時間で大丈夫だと思ったのだ。
しかし、実際は停め場所に困るほど車は多いし、いざ降りてみると信じられないほど人が並んでいるブースもある。まだ真っ暗なのにも関わらず…。

あさイチマルシェ。

市場の周辺にあって、佐世保の新たなスポットとして人気の「万津6区」が主催となって、初開催したイベントだった。

今回のイベントの立役者のひとり・小仙さんは岡山県出身。昨年9月に単身で佐世保に移り住んだという移住組だ。小仙さんのフットワークの軽さは、このイベントにも随分といかされている。佐世保に興味を抱くきっかけとなったブルーキャブタクシーのTシャツには「賃走」の文字が

そもそも佐世保といえば『朝市』と言われるほど、各方面から小さな個人店や商店などが早朝から集い、新鮮でお得な品を求める人々で賑わっていた。そう、朝市は、かつては佐世保の代名詞でもあった。

それが24時間営業するスーパーなどの出現や、人々の生活様式の様変わりもあって、かつてほどの賑わいではなくなっていたのは、皆さんも知るところであろう。
それでも朝市はずっと頑張ってきた。早朝からのぜんざい会や子供たちのスケッチ大会、せり体験といったイベントの開催や、改築していつでも買いやすいスーパーを敷地内に作ったりと、工夫と努力とエネルギーを注ぎながら、今に存在し続けてきた。
それでも…。

ひとつの突破口

もちろん万津6区の人たちもその苦悩は耳に入る。
目と鼻の先とはいえ、営業スタイルも客層も違う自分達に、いったい何が出来るだろう。モヤモヤとした感情はあったものの、特段これといった策もないままに、時だけが過ぎていた。そんな中、ひとつの突破口として実験的に開催されたのが今回の「あさイチマルシェ」という訳だ。

万津6区のお店はもちろんのこと、草の根的に知り合いに声をかけ、SNSで拡散し、最終的に出店者が15件ほど集まった。驚くのはそのスピードだ。なんとこの計画が持ち上がったのは2022年の12月。開催は約1ヶ月後の23年1月21日。その行動力にはまったく恐れ入る。

当初は、午前4時から午前8時という、いわゆる朝市時間に開催したところで、人はそんなに来ないだろうという思いが、主催者側にも正直あったとのこと。誰も来なくても、それぞれがお店を行き来して楽しもう。それはそれで面白そうだし、とにかくやってみよう。そんな思いだったらしい。

ところがだ。実際午前6時にノコノコ来た私は、うどんもおでんもコーヒーもくじら焼きも、何一つ買えなかった。全て完売。『そんなに来ないだろう』の気持ちで用意された数がそもそも少なかったことはもちろんあるだろうが、それにしても、だ。

万津6区にある人気店「CAFE.5」が出店したうどんは、途中なんども麺を補充しにいくほど人気だったそう

「パーラーマノス」さんはおでんを販売。大根や牛スジなど7種類を700円で食べられたとあって、もちろん完売。「こんなに来るとは想像していなかった」と口にする大勢のうちのひとりだ。子どもの頃、朝市でカブトムシなどを見るのが楽しかったという思い出も教えてくれた

温かそうな湯気をくゆらせながら、豊かな香りを放つコーヒーは、並んで待っていた人の分で終了

こちらも並んでいた方の途中で完売した様子。一番長い行列を作っていたのはここだった

敗北者である私は、それでも楽しめる場所を見て回った。暖かい火の周りに集まる人々はどうやらマシュマロを焼いているらしい。羨ましい。

火でマシュマロを焼く人達

その向こうから、楽しげな子供たちの声が聞こえてきた。
近づいてみると、まだ夜明け前にも関わらず、まるで昼間の公園にでも迷い込んだような光景が、そこには広がっていた。鮮やかでにぎやかなイラストが描かれたボードを囲み、コマを片手にはしゃぐ子どもたち。長崎県立大学の学生さんたちが、佐世保独楽の遊び方を教えていたのだった。小学生ほどの子どもたち、男の子も女の子も、とにかくはしゃぎながら、ちゃんと独楽で遊んでいた。

その光景も新鮮だった。佐世保朝市同様、ウン十年前には当たり前のように日常に溶け込み、そしていつしか存在が遠のいていった佐世保独楽が、令和の子どもたちをはじける笑顔に変えていたからだ。教えているのが年の近いお兄さんやお姉さんで、しかもお兄さんやお姉さん自身も心から楽しんでいるからかも知れない。ピンクや黄色のパステルカラーに塗られたPOPな佐世保独楽を見て、そう思った。

教えているのは長崎県立大学・佐世保独楽サークルに所属する学生さん。代表の岡本さん(写真左)は兵庫県出身の4年生だ。立ち上げたばかりのサークルだそうで、今後も街中でイベントをしていきたいと語ってくれた

可愛らしく絵付けされたオリジナルの佐世保独楽

そのほか、洋品店や雑貨屋さんなど、朝市の中央に設けられたマルシェの一角は、家族連れや若いカップル、友達同士などで、とにかくにぎわっている。何度も言うが、この集客力には驚きだ。それだけ「万津6区」は人気ということだし、この時間帯のマルシェという非日常を、みんな楽しみに来たのだろう。

訪れた人たちがまるでキャンプ場に来たかのようにくつろげるオシャレな映像ブースも。設けたのは佐世保をこよなく愛す「佐世保ベース」の社長(画像左)。ごっちゃん(右)とともに活躍する番組や長崎・佐世保を舞台にした短編映画も流されていた。

YouTube/佐世保ベース
短編映画祭ホームページ/渋谷TANPEN映画祭CLIMAXat佐世保

一方で。
マルシェでにぎわう中央を、ぐるっと囲むように存在する本来の朝市。新鮮な果物や野菜、鮮魚などが、市場らしい姿と価格で販売されている。「市場」という言葉がピッタリのおじちゃんやおばちゃんがそこにはいた。私はその風景が大好きだし、なんなら買い物も楽しみにしてきた。しかし、そこにはマルシェほどの賑わいはない。同じ場所にありながら、こちら側だけはまるで日常の光景のようだ。

「お魚これで300円ってすごくない?」「トマトひと箱で500円だって~!」そんな言葉で、中央でにぎわう人たちを振り向かせたい気持ちになった。

今回はじめて開催された『あさイチマルシェ』。
早朝でも人が来ることは分かった。人気のものは売り切れるほどだと分かった。みんなが並んででも買うものがあることも分かった。だからきっと次も開催されるはずだ。

その時には、果物や野菜や鮮魚を売るおじちゃんやおばちゃんたちも、必ずや忙しい思いをするはず。この『あさイチマルシェ』がどんどん成熟しながら、いつしか新たな佐世保の名物になることを夢見つつ、まぶしいオレンジ色の朝日が登り始めた頃に市場を後にした。

鮮魚店で買ったお寿司と、袋一杯に入ったトマトと、片手で持てないほど大きなキャベツをお土産に。

この記事を書いたひと

TOMOKOプロフィール
TOMOKO/トモコ

ラジオパーソナリティ兼ライターとして活動。都市伝説が好きで、見えない世界にも興味津々。
犬や猫にはすぐに話しかけてしまうが、カエルは大の苦手。
FM佐世保 はっぴい!FM|出演番組
●月・火曜日8:00〜/させぼ瓦版●月〜水曜日8:05〜/おはようともこです!●第1・3・5火曜日17:00〜特ダネ宅急便

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「住まいリングさせぼ」編集部長

橋本鎌嗣(ニックネーム:もっちゃん)
「住まいリングさせぼ」編集部長

佐世保生まれ、一児のパパ。サイト監修者であり、佐世保・小値賀「海風の国」観光マイスター。宅地建物取引士の資格も有し、不動産や住まい、暮らしのアドバイスも。「佐世保に住もうよ!愛する地元の魅力をもっと伝えたい!!」

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