考えに考え抜かれた空間
広い敷地の中にどっしりとした存在感を放つ平屋の家。片流れで個性的なシルエットに、思わず目も心も奪われます。
優しいクリーム色の外壁に、目隠しの役割を果たすダークブラウンのウッドパネルがアクセントとなっていて、柔らかさと重厚感を感じるこのお宅が、加藤邸です。
緊張しつつも呼び鈴を鳴らし、中からの返事を待って玄関の扉を開けると、思わず感嘆の声をあげてしまいました。
そこには、足元の明かり取り窓から自然光がたっぷりと差し込んで、直線に伸びる廊下と高い天井が開放感をつくり出した、なんとも清清しい空間が広がっていたからです。
外から入っても全く暗さを感じないほど、明るい土間スペースとなっていました。
この玄関の美しさをキープできるとは、いったいどんなご家族なのだろう…と思っているところに、明るい笑顔の奥様と、見るからに優しそうな旦那様が出迎えてくださいました。
お二人の姿からは、お二人が織り成す暖かい雰囲気が伝わってきて、一瞬でこちらまで幸せのおすそ分けをいただいたような気持ちに。
自宅でもピアノ教室を
この日は、そんな素敵な加藤ご夫妻に、ご自宅兼ピアノ教室を案内していただきました。
加藤邸は、奥様がご自宅でピアノ教室ができるようにと、考えに考え抜かれたお宅です。
実は、玄関から一直線に伸びる廊下の先に見えるのは、堂々とした威厳を放つグランンドピアノ。玄関からの直接動線はまさに「絵になる」光景で、いかにこのお宅がピアノ教室を大切にして建てられたかが、一目で伝わってきます。
グランドピアノがあるレッスン室の横は、一家が使用するリビング。平屋ならではの勾配天井で、縦にも贅沢な空間がたっぷりと伸びています。
ドアや窓も、全て規格より高く造られていることもあり、そこはまるでコンサートホール。壁一面にとられた大きな窓には、特注の大きな障子が合わせられ、柔らかい日差しと和モダン特有の優しさを演出していましたよ。
壁にかけられたカラフルなお子さまの絵も立派なアートです。
リビングとレッスン室は、間仕切りで仕切られ、普段はそれぞれ独立したスペースとして使用されているそう。そして必要なときには開放し、さながらホールとして活用できるように工夫されているのです。
それぞれの窓の配置も、光や風の通り道として計算しつくされ、つくづく細部にわたるまで考え抜かれた設計だと、感心するばかり。
そしてもうひとつ感心するのが、家全体の物の少なさです。
家族が集うリビングですら、ほとんど物が置いてありません。いったいどうしているのか奥様にうかがったところ、「片づけが苦手なので、ミニマニストを目指しているんです」との返事が返ってきました。
頭では分かっていても、なかなか実行できない「物を持たない暮らし」は、こうしてお手本を目にすると、原動力になりますね。実践あるのみです。
そんな奥様に、同行した方のお子さんへ実際にレッスンをしていただくことにしました。
まるで音楽室のような、心地よい緊張感を感じる非日常的な空間。
優しく丁寧に教えてくださる先生としての奥様は、印象どおり、まさに優しさに溢れていました。
お子さんもリラックスしてレッスンのぞめた様で、本当に楽しそうに演奏していましたよ。「またレッスンを受けたい!」と物足りなさを感じる程夢中だったようです。
こんな素敵なピアノ教室と、家族の心豊かな暮らしを見事に調和させたお宅を拝見すると、伝わってくるのはご主人の大きな愛情。
家のあちこちに、生徒さん、ご家族、そしてなにより、『ピアノ教室を自宅でやりたい』という奥様への愛情が溢れています。
「世のご主人は見習うべきですね」というと、ご主人は照れくさそうに笑われていました。
ご主人には、この家でのお気に入りの場所のひとつに案内していただきました。
そこは、駐車場の先にあるサークル状のデッキスペース。ここでは、お休みの日に家族や仲間とBBQをしたり、のんびりご近所の方と晩酌を楽しんでいるそうです。
きっと笑顔が絶えない場所なのだろうと想像でき、心豊かに暮らすヒントをこの場所でも学べた気がします。
おわりに
この加藤邸は、加藤さんご家族の希望を元に、ご夫妻と設計士さんとがイチから創り上げたもの。
奥様の希望を叶えるため、ここ波佐見町に移り住み、設計士さんの様々な提案もありながら、ご家族の要望を見事に形にしたものです。
そうしてできあがった住まいと暮らしは、13年経った今でも色あせることなく、キラキラと輝いているようでした。
最初に目を奪われた、外観の片流れシルエットは「グランドピアノ」を表現しているとか。
『加藤ピアノ教室』は、お子さんからご年配までレッスン可能だそうです。愛情溢れるこの素敵な空間で、あなたもレッスンを始めてみませんか?
こちらの記事も読まれています