今回は、住宅を修繕するうえでポイントになってくるリフォームと建て替えについて詳しく解説していきます。
長く住み続ける住宅には、
外壁がはがれてしまった
水回りに不調が出てきた
近年の異常な自然災害に備えて家の安全性を上げたい
などの問題がつきもの、家のことで悩みを抱えてい方はぜひ参考にしてください。
目次
リフォームと建て替えの違いは︖
まずはじめに「リフォーム」と「建て替え」の違いは既存住宅の基礎部分の工事をするかしないかという部分にあります。
そのほかにも、
検討する築年数の目安
工事にかかる費用
改修以外にかかる費用
工事期間の長さ
プランの自由度の高さ
など、それぞれ特徴が異なるので、住宅の改修を考えている方はまずどちらに当てはまるのか比較して検討しましょう。
リフォームとは?
既存の基礎部分を残したうえで部分的な改築、増築、修繕などを行い新築同様の状態に戻すことです。
水回りや間取り変更、外壁のみなどの部分的なものや、骨組みを残し大幅に修繕を行うフルリフォームなどその形態はさまざまです。
また、既存の建物に新たな機能や価値を付け加えるリノベーションも近年人気を集めているようです。
建て替えとは?
既存の住宅を基礎部分から取り壊してゼロから住宅を建築することです。
老朽化や災害などによる損傷が激しく、修復をする場合には時間や費用がかかりすぎると判断された場合に対象となります。
建て替えには建築基準法によって定められた原則がありさまざまな制約を課せられるといった特徴もあります。
リフォームと建て替えを特徴で⽐較︕
リフォームと建て替えにはさまざまな違いがあります。
ポイントごとに表で比較してみましょう。
リフォーム | 建て替え |
定義 | |
既存住宅の基礎部分を残した状態で部分的に改修すること。 | 既存住宅を基礎部分から取り壊し、ゼロから住宅を建て直すこと。 |
工事にかかる費用の目安 | |
300~2,500万円 | 1,500~4,000万円 |
工事期間 1~5ヶ月 (1~3ヶ月の事例が特に多い) |
3~8ヶ月 |
検討する築年数の目安 | |
部分リフォーム:築10~20年 フルリフォーム:築20~30年 |
築25~30年 |
プランの自由度 | |
広さや間取りに制限される場合あり | 自由設計が可能 |
もちろんこの比較は目安であり、工事の内容・規模によって費用や施工期間は変わってきます。
建て替えを考えていても、住宅の基礎がしっかりしていれば費用や期間が少なくて済むリフォームに切り替えることが可能です。
一方で、部分リフォームを検討していたのに受託の耐久性が悪くなっていて建て替えが必要だったという場合も少なくありません。
無駄な手順を踏むことがないように、まずは現住宅の検査をしっかりと行ったうえで工事方法を検討してみましょう。
以下ではそれぞれの違いについて詳しく解説していますので参考にご覧ください。
費用の違い
リフォームか建て替えかを決めるうえで大きなポイントになってくるのは費用です。
一般的な費用の違い
・建て替え 1,500~4,000万円
・リフォーム 300~2,500万円
家を建て替える場合、1,500~4,500万円ほどの費用がかかるケースが多いようです。
建て替えの費用が高い要因には、
解体費
設計費
建築費
付帯工事費
地盤調査費
印紙税
不動産取得税
長期間にわたる滞在費
など、必要な諸経費がリフォームに比べて大きくかかってくることにあります。
ただ、住宅の状態によっては建て直してしまった方が将来的に安上がりになる場合もあるので、住宅の状態や予算をしっかりと見直したうえで検討しましょう。
一方で、戸建ての住宅をリフォームする場合の目安費用は300~2,500万円です。
平均180万円程度が一般的とされており、建て替えに比べるとかなり費用を抑えることができます。
フルリフォームを行う場合だとしても解体などの費用がかからないためコストを抑えることができるでしょう。
ただ、リフォームはその内容によって費用にかなり差が出てきます。
水回りや外壁などの劣化部分を修繕したいだけなのか、新築時よりも高性能を上げた大幅リノベーションをしたいのか、まずは改善したい点を見直して見積りをとるとよいでしょう。
工事にかかる期間の違い
続いて工事にかかる期間を比較してみます。
一般的な工期の違い
・建て替え 3~8ヶ月
・リフォーム 1~5ヶ月
建て替えはリフォームと比べて工期が長期間に及びます。
解体作業が必要な場合は少なくとも半年以上と見積り、狩り住まいやライフスタイルについても計画を立てておかなければいけません。
一方で、リフォームは1~5ヶ月、なかでも1~3ヶ月で完了する事例が特に多いですが、工事内容によっては住宅に住みながら工事を進めることもできます。
建物寿命の違い
リフォームか建て替えかを判断する場合、客観的な判断基準となるのが住宅の築年数です。
築25年未満の場合
修繕や設備の入替、ちょっとした増築の場合はリフォームで済むことがほとんどです。築25年未満の住宅は基礎がしっかりしているため、リフォームによる定期的なメンテナンスを加えることで建物寿命を築50年近くまで伸ばすことができます。
ただし、二世帯住宅にしたいなどの大幅な増築を希望する場合は建て替えを検討する必要があります。
築30~40年の場合
家の状態に合わせてリフォームか建て替えか検討する必要があります。
状態の良い住宅であれば、断熱対策や耐震補強のリフォームを行うことで建物寿命をさらに30年ほど伸ばすことができます。
築40年以上の場合
築40年を過ぎると建物の木材や耐震面などに問題が出てくる場合が多く、基本的には建て替えを選択することがおすすめです。部分的にリフォームを行っていたり、地盤や基礎がしっかりとしている場合はリフォームで済ませられることもあります。
このように、築20年を過ぎたあたりからリフォームや建て替えを検討し始めるのが一般的です。ただし、あくまで築年数は目安であり、住宅の状態は土壌や環境、素材などによりかなり違いが出てきます。
個人では判断しにくい部分もあるので、住宅診断士などの専門家に相談しプロの目線から確認してもらうようにしましょう。
リフォームと建て替えをメリットデメリットで比較!
リフォームと建て替えにはどちらもメリットデメリットがあります。
以下で詳しく解説していますので、それぞれの弱み・強みを考慮して選択に役立ててみてください。
リフォームのメリット
・コストが安い
リフォームは建て替えと比べるとコストを低く抑えることができます。また、予算に合わせてリフォームの範囲を決めたり資材を決定したり、今年はお風呂場、数年後にキッチンというように数年がかりで行ったりと予算を組みやすいこともメリットとしてあげられるでしょう。
・工期が短い
リフォームは取り壊しやゼロからの建て直しがない分、工期が短く済むのがメリットです。また、リフォームの内容によっては住みながら工事を行える場合もあるので、仮住まいを探す時間やお金も節約できます。
・既存の建物を活用できる
既存の建物を残して活用できるのがリフォームの大きなメリットの1つです。
例えば、家を長年支えている柱を残したり、レトロな雰囲気を残しながら新たな利便性、スタイリッシュさを取り入れるなど、愛着ある家の一部を残しておくことができます。
・施工会社の選択肢が広い
建て替えの場合、工事の依頼先はハウスメーカーや工務店になりますが、リフォームの場合はそれに加えてリフォーム専門の会社を選ぶことも可能です。
近年では個性あふれるリフォーム会社が増えているので、自分が求める雰囲気に合ったリフォーム提案を探せるでしょう。コスパを重視して探せばさらに費用を抑えることもできるかもしれません。
・税金が軽減できる
耐震、省エネ、バリアフリー、同居対応など、リフォームで一定の要件を満たすことで補助金の支給や所得税・固定資産税などの優遇が受けられます。
・二酸化炭素の排出を抑制できる
近年、地球温暖化を抑制するために温室効果ガスの排出削減が叫ばれています。
リフォームは建て替えに比べて資源のロスが少なく、工事に関する温室効果ガスの排出量を削減できるため環境にも配慮して作業を進められます。
リフォームのデメリット
・設計の自由度が低い
リフォームは現存する建物を基礎として行うため、どうしても間取りや構造に制限があるため、建て替えと比べると設計の自由度は低くなるでしょう。
・建物の状態によっては追加の補修費が高額にある
リフォームはコストが安いことがメリットですが、計画を進めてみないと見えないコストも存在します。
例えば、壁をはがしてみるとシロアリによる腐食が見つかったり、給排水管やガス管の老朽化が見つかったり。放置できない問題が起こると追加でリフォームを行っていく必要があり、当初見込んでいた費用とは大幅にずれてくる可能性もあります。
・短いサイクルで補修工事が必要になる場合もある
部分的なリフォームを行った場合、リフォームしていない部分の耐用年数は短いままなので、近いうちに追加の修理やリフォームが必要になる場合があります。
リフォームは複数回に分けることでコストを抑えられますが、そもそも住宅の築年数が長い場合や建物の状態が悪い場合は将来的に建て替えの方が安上がりだったという事例も少なくありません。
・性能向上は難しい
リフォームは愛着ある家を残せることがメリットですが、一方で住宅の性能を向上させるのは難しいというデメリットもあります。
たとえば、
耐震性
省エネ性
バリアフリー
間取り
生活動線
など、新築や建て替えと比べるとこのような性能面を向上させるのは難しいです。
上記のような改善を優先的に考えている方は建て替えも視野に入れて検討が必要になってくるでしょう。
建て替えのメリット
・設計の自由度が高い
建て替えは建物の基礎から新たにつくるため、設計の自由度が新築同様に高いです。打合せなどの手間はありますが、理想の間取りや構造、設備を追い求めたい方には大きなメリットとなります。
・資産価値が上がる
住宅を建て替えると市区町村には「新築」として登録されます。
資産価値としても新築になるので、今後住宅を売りに出すなどの可能性を考えるとリフォームより優勢でしょう。
・建物の性能を高められる
リフォームだと建物性能を向上させる工事は難しいですが、基礎からつくる建て替えの場合は耐震性や断熱性、バリアフリーといった性能を考慮に入れて設計することができます。
近年では予測を超えた自然災害が多く起こっているので、安全で快適な暮らしを手に入れられることは大きなメリットといえるでしょう。
・ローンが組みやすい
実は、多くの金融機関では住宅ローンの使い道を「マイホームの購入、建築、増築、改築資金」に限定しているため、リフォーム用途での利用はできません。
建て替えはリフォームと比べて費用がかかりますが、その反面金利の低い住宅ローンが組みやすくなるのです。ローンを組むことで今後の資金計画も立てやすくなるというメリットを受けることができます。
建て替えのデメリット
・コストが高い
建て替えの大きなデメリットはコストが高いことです。
リフォームに比べると解体や撤去などが必要なため費用がかさむことは避けられません。
・工期が長い
建て替えはリフォームと比べて工期が長くなってしまうことも大きなデメリットの1つです。一般的には3~8ヶ月が建て替え工期の目安といわれているので、その期間に住む仮住まいを探しておく必要もあります。
仮住まいへの引っ越しと仮住まいから新居への引っ越し、時間や手間、費用面でも負担がかかることを覚悟しておきましょう。
・愛着ある建物が残らない
リフォームとの大きな違いは、建て替えの場合だと愛着ある建物を残すことができないということです。長年の思い出がつまった“我が家”を失うことになるので精神的な喪失感は避けられません。
・各種税金がかかる
家を建て替えた場合、住宅を購入したときと同様にかかる「不動産取得税」、建て替えのために必要な登記の一部にかかる「登録免許税」、「印紙税」といった項目の税金が課せられます。
・土地によっては建て替えできない場合もある
土地の状態によっては建て替えができない場合もあります。
住宅購入後に建て替えをしたいと考えている方は、その物件が法的に建て替え条件を満たしているか事前に確認しておきましょう。
リフォームか建て替えかの判断基準
リフォームと建て替え、それぞれのメリットデメリットをもとに判断基準をまとめてみました。
自分の住宅の状態がどちらに当てはまるのかぜひ参考にしてみてください。
リフォームが向くパターン
費用を抑えたい
工期を短く済ませたい
必要な部分だけ改修したい
現在の建物を一部でも残したい
減築を考えている
築年数が20年未満と浅い
将来的に大きな修繕の必要がない
金利が高くても短期で返済を完了したい
複数の業者を検討したい
環境に配慮したい
建て替えが向くパターン
地盤や基礎に不安がある
築30年以上経過している
家族が住み継ぐことを見越して長期的な安心が欲しい
設計の自由度が欲しい
二世帯住宅にしたい
大幅な増築をしたい
平屋や3階建てに建て替えたい
耐久性、耐震性、断熱性、バリアフリーなど住宅の性能を高めたい
住宅の資産価値を高めたい
ローンから資金を得たい
後から後悔しないためには、自分が大切にしたい判断基準に優先順位をつけておくと良いです。費用や資金計画、将来性、家族構成など、さまざまな視点を考慮して話し合いや決定に活かしましょう。
リフォームと建て替えのどっちか迷ったら
リフォームと建て替えには、費用や工期、メリットデメリットなどさまざまな点で違いがあります。
どちらにおいてもすべてを計画通りに行うことは難しいですが、取り掛かる前に自分の優先したいことを考えておくだけで満足度の高い結果が得られるでしょう。
家族と長い時間を育む場所なので、ぜひこの記事も参考にしながらじっくりと問題に向き合ってみてくださいね。