子どものまわりには危険がいっぱい。どんなに気を付けていても「ヒヤリ」としたり「ハッ!」とするような危険な出来事が起きてしまいます。幸い大事故につながらずホッとしたと思いますが、決して安心できません。これら「ヒヤリハット」は大きな事故の前触れだと言われているのです。
親としてしっかり危機意識を持てば、ヒヤリハットの回避も可能です。
今回は、子育て中に起きがちなヒヤリハット防止策について考えてみました。
子育て中のヒヤリハット
子育て中、ヒヤリハットは何度も起こります。細心の注意を払っていても、ほんのちょっとした隙に何かが起こってしまうことは、誰でも経験していることでしょう。家の中だけでなく、園や学校でもヒヤリハットが発生していますし、外出時には交通事故や連れ去りなどの危険にさらされています。
家庭内でのケガや事故
特に子どもがまだ小さい時、ヒヤリハットが一番多く発生するのは家の中。消費者庁が令和2年に行ったアンケート調査によると、14歳以下の子どもを持つ保護者の24%が家庭の中でヒヤリ・ハットを経験したとのこと。最も多かったのが「階段から落ちる」で、次に「台所での火傷」でした。
リビングのソファーや遊具、寝室のベッド、階段、ベランダなど、子どもが落下する危険はいたるところにあります。台所では火傷だけでなく、切ったり刺さったりの事故も。浴室では滑る・溺れる事故。誤飲や頭をぶつける危険は家中にあるでしょう。
添い寝していて子どもの顔を塞いでしまい、窒息させそうになったという経験談もあります。
子どもは日々成長していて、昨日までできなかったことが急にできるようになるもの。手先もどんどん器用になり、身体能力も高くなっていきます。とても登れないだろうと油断していた窓やベランダにいつの間にか登っていた、ということもあるので注意が必要です。
外出中の交通事故
子どもが外出中、一番気になるのは交通事故。元気に家を出た子どもが交通事故に遭って怪我するなんて、とても耐えられるものではありません。最悪の場合、二度と戻らないこともあるのです。子ども家庭庁の調査によると、1歳以上の子どもの「不慮の事故死」の原因で、最も多いのが交通事故死という結果でした。
子どもが一歩外に出ると、まわりは交通事故のリスクでいっぱい。ちゃんと横断歩道を渡っていても、車が突っ込んでくるかもしれません。ボールや友達、ペットなどを追いかけて道路に飛び出すこともあるでしょう。信号が青だったとしても渡りきる前に赤になり、どうしたらよいかわからず引き返して車に接触した、という話もよく聞きます。バスの乗降時や家の駐車場などでも油断はできません。
子どもが少し大きくなれば自転車に乗って外出するようになりますが、成長を喜ぶ一方で交通事故のリスクも高まり心配になります。友達の自転車と接触したり、歩行者にぶつかったり、車に巻き込まれたりなどのリスクがあります。
園や学校でのケガや事故
子どもの安全を信じて預けている保育施設や学校でも、ヒヤリハットは起きています。保育士や教師も人間なので仕方ない部分もありますが、数多くのヒヤリハットを見逃した結果重大な事故につながる事も。送迎バスに置き去りにされた子どものケースなど、ちょっとした確認で防げたはずの事故にやるせなさを感るのではないでしょうか。
内閣府令和4年にまとめた「教育・保育施設等におけるヒヤリ・ハット事例集」では、特に「見落とし」に関する事例を収集。「送迎バス」「園外保育」「園内の室内保育」「園内の室外保育」などシチュエーションごとに、なぜ見落としてしまったのか・どうすれば良かったのかがまとめられています。
学校でも事故は多発。体育の授業中や運動場で遊んでいる時、教室の中、休み時間や通学中、給食中など、あらゆる場所に危険が潜んでいます。
連れ去り、行方不明、不審者遭遇
ほんの一瞬目を離しただけなのに、子どもがいなくなってしまった。そのまま戻って来ないのでは、危険な目に遭っているのでは、と想像しただけでパニックになってしまいます。
子どもの連れ去り、行方不明、不審者のニュースが後をたちません。警察庁の資料によると、令和5年の行方不明者数は9万人以上、そのうち9歳以下の子どもの数は1,115人にものぼります。別の資料では、平成24年度に13歳未満の子どもが犯罪に巻き込まれた数は25,612件で、年々増加傾向にあるとか。声掛けや写真を撮られるなどの被害も入れると、かなりの数になるでしょう。
好奇心旺盛な子どもは、何かに夢中になると手を振りほどいて走り出すことがあります。しょうがないな、と見逃さないようにしてください。買い物中でも子どもから注意を外さないように。
また、ほんの少しの距離だから、知ってる道だからと子どもひとりで歩かせるのは危険。知らない人についていかない、知っている人であっても安易に信じない、など徹底して教える必要があります。
危機意識をもって子どもに事前に教える
子どもは自分の行動のどこが危険につながるのか、よくわかっていません。親が子どもをとりまく危険について認識し、危機意識をもって子どもに教える必要があります。
まずは、親自身があらゆる危険を洗い出すこと。
これまでどんなヒヤリハットがあったでしょうか?
子どもの性格や年齢、行動範囲などによって想定される危険が変わります。
何より大事なのは、「事前に教える」ということ。事故が起こってからでは遅すぎます。そして、具体的な内容を繰り返し教えること。実際に危険が起きそうな場所に行ったり、ロールプレイをしてみたり。親が持つ危機意識を子どもと共有できるよう、コミュニケーションを工夫してください。
家庭内での防止策
家庭内で起きるヒヤリハットの内容は、子どもの年齢や発達によって変わる傾向にあります。どのように防止すれば良いのでしょうか?
0~3歳
特に誤飲や窒息に気を付けましょう。大きさが4㎝以下のものは、赤ちゃんの口に入ってしまうため特に注意が必要。目の前にあるものを口に入れるため、小さなおもちゃ、食品、部品や小物などを子どもの手が届く範囲に放置しないように。気道に詰まったり、中毒の危険があります。また、ベッドや抱っこ紐から滑り落ちるリスクもあるため対策が必要になります。
ハイハイできるようになったら…
心配なのが火傷や転落など。台所や暖房器具に近づけないようベビーゲートを使うなどの工夫を。子どもの手が届く場所に熱い飲み物が入ったマグカップやポットを置かないように。冬はヒーターやストーブにも注意しましょう。浴室では滑ったり溺れたり、誤飲の危険もあるので、入れないようカギをかけて。すぐに鍵の開け方を覚えることも考えられるので、二重ロックなど子どもが入れないよう工夫してください。
頭をぶつけて怪我をしないよう、家具の角にコーナークッションをつけて。階段の前に転落防止柵を置いたり、手足や首にコードが絡まないようにまとめるのも忘れないようにしてください。ダメージを小さくする転倒防止リュックなども流通しているので、活用してみては。窓やベランダの近くに、足場になるようなものを置かないようにしてください。簡単に登ってしまい落下の危険があります。
5~6歳
危険に対する理解ができるようになります。家の中の危ない場所はどこなのか、どんな危険が想定されるのか、繰り返し教えるようにしてください。
学校など外での防止策
学校や園、塾、放課後児童クラブなど、子どもが普段過ごす場所とは、連絡を密にするよう心がけましょう。連絡帳やお知らせなどを活用してください。保護者会などにも積極的に参加すること。子どものヒヤリハット情報を共有してもらった際は、感情的にならず冷静に話を聞き、今後の対応について確認しましょう。
学校や園などの危険
例えば、バスに閉じ込められたらクラクションを鳴らし続けるよう伝え、練習しておくように。遊具から飛び降りない、水道のまわりは滑りやすいので走らないことなどを約束しましょう。
外に出かけた時の危険
交通事故、水の事故、転倒などによる怪我、迷子・行方不明、不審者遭遇や連れ去り・天災など多岐にわたります。小さいうちはひとりで外に出さないこと、歩くときは手をつなぐことが重要です。車で出かける際も、置き去りにしたり先に子どもだけ降ろすことのないように。交通ルールについては小さいうちから繰り返し教えてください。
小学生になると…
行動範囲が広がり、お友達と外で遊ぶことも増えてきます。道路に飛び出さない、水辺に行かないなど、外で遊ぶ時のルールを親子で作り、常に確認しあいましょう。自転車やキックボードなどで外出するときはヘルメットやサポーターを忘れずに。
知らない人についていかないこと、追いかけられた時に逃げ込む場所も必ず教えましょう。外で何があったか、誰に会ったか、知らない人から声をかけられたり写真を撮られたりしていないかなど、子どもの話を注意深く聞くことでヒヤリハットに気づくことができます。そのくらい大丈夫かな、と安易に考えて放置しないようにしてください。
まとめ
子育ては、ヒヤリハットの連続です。ほんの一瞬だから、これくらい大丈夫、などと放置してはいけません。子どもの安全を守るヒントととらえ、対策しましょう。
家の中で起こるヒヤリハットは、柵を設置したり口に入る小さいものを片づけるなど、物理的な対策が可能です。子どもが小さいうちは、親が先回りする形で対応していきましょう。
家の外で起きるヒヤリハットは、親の目が届かない場所で発生することが多くなります。小さいうちはひとりで外に出さないように。大きくなったら、外で想定される危険を子どもに繰り返し教え、危機意識を育てましょう。迷子札を付けたりキッズ携帯を持たせることも考えて。子どもの成長に合わせて、柔軟に対応することが大切です。
子どもの動きは予測不可能。そして、ずっと目を離さずにいることも不可能です。今回の記事により、親としてどのような点に気をつけるべきか、考えるきっかけになれば幸いです。